about国登録有形文化財

明治創業の弊館は、年月を重ねた本館3棟と新しい清々しさを備えた新館1棟から成り立ちます。
その中で平成26年4月に、大正築の本館2棟と門柱・石垣が国の登録有形文化財となりました。
以下は、登録される際の登録所見などを一部抜粋したものです。

大正4~5年築:お部屋「52番」の棟について


登録有形文化財名称 伊藤屋旅館奥棟
構造・形式 木造二階建て入母屋造り桟瓦葺
建築年代 大正震災前(伝聞)

所見

伊藤屋は、明治21年に伊藤周造が政府の高官を宿泊させる目的で創業した旅館である。島崎藤村ゆかりの宿としても知られている。

大正十五年建設の本館は敷地の東側に南面し、その北方にある奥棟は大正震災前の建設である。奥棟は山裾を二段に造成した下段に一階を造り、一階と上段に跨って入母屋造桟瓦葺の二階を建てる。二階主室は東面に床間を中心に北に地袋、南に平書院と地袋のある座敷飾り備える。違棚と書院の背面壁に明窓を設けるのは珍しく、窓に狭間格子入の硝子障子を立て、書院窓の上に花狭間格子入りの硝子欄間を嵌める。室内仕様は桧の3寸5分角柱と内法長押を用い、長押上に縁木を付けて、それらの下面に唐戸面を取るなど丁寧な仕事を施している。天井は棹縁天井、壁は土壁、部屋境の欄間に梅と竹及び松の透彫板を嵌める。南入側縁は化粧屋根裏小舞天井としたベランダ風の作りで、南面に中敷居を入れて上下に繊細な組子入引違硝子戸を立て、上部に硝子欄間をはめる。二階座敷は、もと明治天皇の侍従長徳大寺公爵が滞在していたと伝える。

一階は二階より三尺前に出して南入側を銅板平葺とする。平面は南入側縁に面して八畳敷と六畳敷を東西に並べ、六畳敷の西側に階段、東入側縁の奥に手洗いを設ける。八畳敷は北面に床間と押入を備える。

奥棟は大正震災前の建物であり、3寸5分角の細い桧柱と繊細な組子入硝子障子を多用した近代和風建築である。特に二階の主室は違棚と書院の背面壁に明窓を設け、そこに狭間格子入の硝子障子を立てるなど他に見られない特長をもつ。このため、登録有形文化財登録基準の「三 再現するものが容易でないもの」に該当するものと考えられる。

大正15年築:お部屋「17番」「19番」の棟について


登録有形文化財名称 伊藤屋旅館本館
構造・形式 木造二階建て入母屋造桟瓦葺
建築年代 大正15年上棟(棟札)

所見

伊藤屋旅館の本館は南門を入った右手正面に立つ。本館は南面する総二階の楼閣風建物で、入母屋造桟瓦葺の屋根をあげる。二階座敷は当初の形がよく保存されている。平面は南入側縁に面して東より十畳敷と西八畳敷きの奥に六畳敷きの前室を設ける。十畳敷きは東面中央に床間、床南に付書院と地袋、北に違棚を備える。違棚と書院の背面壁に明窓を設け、そこに硝子障子を立てるのは奥棟主室と同じ意匠である。東八畳敷きは西面に床間と床南に平書院を備え、西八畳敷は東面に同じ床間と平書院を備える。室内使用は、3寸6部角の細い桧角柱と内法長押を用い、各座敷とも天井を棹縁天井に作り、壁を土壁とする。南・西両入側縁は化粧屋根裏小舞天井、南入り側縁は奥棟と同じベランダ風の意匠で、南面に繊細な組子入硝子障子を立てる。

本館は総二階の楼閣風建物で、棟札により大正十五年に上棟されたことが知られる。伊藤屋旅館の本館は湯河原温泉が整備された大正末期の建物であり、三寸六分角柱の細い桧柱と繊細な組子入硝子障子を多用した近代和風建築である。特に、主室は違棚と付け書院の背面に狭間格子入の硝子障子を立てた明窓を付けるなど他にみられない特長をもつ。このため、登録有形文化財登録基準の「三 再現することが容易でないもの」も該当するものを考えられる。

御影石の門柱と本小松石の石垣


登録有形文化財名称 伊藤屋旅館の門柱と石垣
構造・形式 門柱 御影石柱、石垣 本小松石・間地石積み
建築年代 門柱2本 各0.68メートル角、高さ2.15メートル
西側石垣 総長さ27.71メートル、高さ1~1.2メートル
東側石垣 総長さ15.78メートル、高さ0.8~1.9メートル
建築年代 大正頃

所見

伊藤屋旅館は南側の県道に面して低い石垣を築き、その東寄りの入門に御影石の門柱を立てる。石垣の内側には樹木が植えられ、背後の山稜とともに落ち着いた風景を形成している。伊藤屋は島崎藤村ゆかりの宿として知られている。藤村は、昭和4年1月から年四回ずつ大作『夜明け前』を中央公論社に発表した。その間、原稿を同社に渡すと、次の仕事にかかるまでの余暇を見つけて湯河原に出かけ、伊藤屋旅館に宿泊して休養と構想を練ったという。

門柱は御影石製で、東門柱を西門柱より内側に寄せて立てている。柱間は内法で6.40メートルである。近年、県道に歩道をつける工事が行われ、西側の門柱と石垣は敷地の内側に少し移設された。石垣は本小松の間知石を二段から三段に積み、笠石を置いた上に蒲鉾型の白御影石をのせている。間知石と笠石は表面の四周に丸面を取るのが特長で、温和なふっくらとした壁面を造っている。東面の石垣は段差を一か所で付けている。間知石は門柱側で二段積み、敷地東端で四段から五段積みである。間知石積みの上に笠石を置き、その上に蒲鉾型の白御影石をのせるのは西側石垣と同じである。大正から昭和ごろの古写真に門柱と石垣が写り、門柱を通して旧館の玄関を望んでいる。これによると、門柱と石垣は本館が建設された大正十五年以前に出来ていた可能性がある。

伊藤屋旅館の石垣は本小松の間知石と笠石の表面の丸面をつけた温和な造りが特長である。石垣は内側を植栽とし、低い石垣と植栽が一体になって清涼な落ち着いた街並みを形成している。このため、登録有形文化財登録基準の「二 造形の規範となっているもの」及び「三 再現することが容易でないもの」に該当するものと考えらえる。



お客さま方のおかげで年月を経た建物などを受け継いでくることができました。
石垣・門柱はご来館の際にお目に入りますし、大正初期、大正15年建築の棟はそのお部屋以外にお泊りのお客さまにも階段などご覧いただけます。


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