
2.26事件と伊藤屋
歴史が動いたその日。
舞台になったのが伊藤屋でした。

昭和11年2月26日に日本帝国陸軍若手将校が決起した2.26事件は、陸軍の皇道派の青年将校が対立していた統制派の 打倒と国家改造を目指し、約1500名の部隊を率いて首相官邸等を襲撃した事件です。
この時、元内大臣であった牧野伸顕伯爵が宿泊していたのが伊藤屋で、東京以外で唯一事件の舞台となりました。宿泊者は牧野元内大臣夫妻とそれぞれのお付の女中、看護婦、護衛の巡査の計7名。宿泊先の条件は独立した建物であるということから、弊館別館「光風荘」が選ばれました。
牧野伯は滞在10日の予定でお見えになり、3日目に事件に遭遇。襲撃の責任者河野寿陸軍航空大尉は、予め民間人の渋川善助夫妻と偵察のため弊館本館に宿泊。牧野伯の動向を確認後一旦東京に戻ります。
その後兵を連れ自動車で湯河原に入り、夜明けを待って光風荘を襲撃しました。その際牧野伯はお付の女中の機転で女物の着物をかぶり勝手口から脱出、塀を乗り越えて裏山に逃れました。河野大尉の「女子供は傷つけるな」との命令により助かったとのことです。襲撃の際光風荘は全焼し、現在ある建物はその後建てられたものです。河野大尉らが襲撃前の偵察に宿泊した 本館の客室は、最大限当時の趣を残したまま現在も利用されています。